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大阪営業所
大阪市北区天神橋2丁目北1番21号

TEL 06-6358-3541

流量計とは:水と、時と、技術の物語:流量計の歴史をひも解く

【目 次】

  1. 流量計とは 「プロローグ」
  2. 流量計の起源と発展
  3. 近代流量計の黎明期
  4. 近代的流量計の発展
  5. 現代流量計の発展
  6. 流量計の種類と特徴の詳細解説
  7. 流量計の普及状況と市場動向の詳細分析
  8. 流量計の技術的課題と将来展望
  9. 結論:流量計の過去、現在、そして未来
  10. 参考文献と追加リソース

流量計とは「プロローグ」

  • このページでは、水と深く関わる千代田工業株式会社の製品の一つである流量計に焦点を当て、その歴史と未来について考察します。このウェブサイトが、流量計に関わる皆様にとって、少しでも有益な情報源となれば幸いです。流量計技術は今後も進化を続け、私たちの産業と生活を支える重要な役割を果たしていくことでしょう。

 

古代ローマの知恵:

  • 古代ローマ人は、水道橋を流れる水の量を把握するために、原始的な流量計を使用していました。彼らの知恵は、現代の流量計の礎となっています。

試行錯誤の時代:

  • 18世紀、19世紀に入ると、流体力学の発展とともに、オリフィス板やベンチュリ管など、圧力差を利用した流量計が誕生しました。しかし、それはまだ黎明期。開発者たちは、流体の複雑な挙動に挑み、試行錯誤を繰り返しました。

技術革新の波:

  • 20世紀、電磁誘導や超音波など、新しい原理が導入され、流量計の精度は飛躍的に向上しました。高温、高圧、腐食性流体など、過酷な環境下での測定も可能になり、産業の発展を支えました。

そして現代へ:

  • 現在、流量計は多種多様な分野で活躍しています。私たちの生活を支える水道、エネルギー産業、医療、宇宙開発まで、流量計は欠かせない存在です。

このウェブサイトでは、流量計の歴史、種類、そして未来について解説します。流量計がどのように進化し、私たちの生活に貢献してきたのかを紐解いていきましょう。

流量計:歴史と革新の軌跡

1. 流量計の起源と発展

1.1 古代の流量測定

  • 古代文明において、水は生命と繁栄の源であり、その管理は社会の発展に不可欠でした。紀元前3000年頃のメソポタミア文明では、灌漑用水路の流量を粗く見積もるための簡易的な水路構造が発見されています。
  • 古代エジプトでは、ナイル川の水位を測定するための「ナイロメーター」と呼ばれる装置が使用され、これが流量測定の初期形態と考えられています。水位の変化から間接的に流量を推定し、農業計画や税金の算定に利用されました。

1.2 古代ローマの貢献

  • 古代ローマ人は水利工学において革新的でした。紀元前1世紀には、ローマの技術者ウィトルウィウスが著書「建築十書」の中で、パイプ内の水流を測定するための装置について記述しています。
  • ローマ帝国では、水道橋を通じて都市に供給される水の量を管理するために、「カリブレーティッド・コックス」と呼ばれる銅製のパイプシステムが開発されました。これは特定の断面積を持つ出口を通過する水量を測定する原始的な流量計と言えます。管理者は「アクアリウス」と呼ばれ、水の分配と測定を担当していました。

1.3 中世から近世へ

  • 中世ヨーロッパでは、水車の効率的な運用のために水流の測定が重要でした。13世紀頃から、堰や水門を使った簡易的な流量測定が行われるようになりました。
  • イタリアのレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)は、流体力学の原則に関する先駆的な研究を行い、彼のノートには水流測定のための様々な装置のスケッチが残されています。彼は渦の形成と流体の挙動について詳細に観察し、後の流量計開発に影響を与えました。

1.4 科学革命と流体力学の基礎確立

  • 17世紀から18世紀にかけての科学革命期に、近代流体力学の基礎が確立されました。
  • トリチェリ(1608-1647): イタリアの物理学者エヴァンジェリスタ・トリチェリは、1643年に流出速度の定理を発表。これは後の差圧式流量計の理論的基礎となりました。
  • ダニエル・ベルヌーイ(1700-1782): スイスの数学者ベルヌーイは、1738年に著書「流体力学」を発表し、ベルヌーイの原理を確立。これは流体の速度と圧力の関係を説明し、多くの流量計の基本原理となりました。
  • レオンハルト・オイラー(1707-1783): スイスの数学者オイラーは、流体の運動方程式を発展させ、理論流体力学の基礎を築きました。

2. 近代流量計の黎明期(18世紀後半〜19世紀)

2.1 最初の科学的流量計

  • 18世紀後半から19世紀にかけて、産業革命の進展とともに、より正確な流量測定の必要性が高まりました。
  • ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴェンチュリ(イタリア、1746-1822):1797年、ヴェンチュリは管の断面積の変化による流体の圧力差を利用した測定手法を開発しました。彼の名前を冠したベンチュリ管は、今日でも使用される最も重要な差圧式流量計の一つです。ヴェンチュリは何年もの実験を重ね、水流の測定に適した管の形状を見出すまでに多くの困難を経験しました。
  • アンリ・ピトー(フランス、1695-1771):1732年に、ピトーは流体の動圧と静圧の差を測定するピトー管を発明しました。当初は河川の流速測定用に開発されましたが、現在では航空機の速度計測やボイラーの給水量測定など広範囲に使用されています。ピトーは、パリのセーヌ川で実験を重ね、流速分布の不均一性という問題に直面し、これを解決するために測定点の配置に関する研究に多くの時間を費やしました。

2.2 実用化への苦闘

  • これらの初期の流量計は、理論は正しくても実用化には多くの課題がありました。
  • 計測精度の問題:初期の流量計は測定誤差が大きく、特に低流量時の精度が問題でした。
  • 材料と製造技術の限界:当時の金属加工技術では、精密な部品の製造が困難でした。
  • 校正方法の確立:正確な校正方法がなく、測定結果の信頼性に疑問がありました。
  • 英国の技術者クレメント・ヘルシェル(1792-1871)は、特に水道事業向けの実用的な流量計の開発に取り組み、1858年に彼が設計した水量計「ヘルシェル水量計」は、当時の標準となりました。しかし、彼は部品の摩耗や詰まりといった問題と常に戦っていました。

2.3 19世紀の技術革新

  • 19世紀後半には、工業化の進展により流量測定の需要が急増し、様々な流量計が開発されました。
  • ジェームズ・トムソン(イギリス、1822-1892):1852年にV字形の堰(Vノッチ)を使用した開水路流量測定方法を開発。精度の高い測定を可能にしました。
  • オスボーン・レイノルズ(イギリス、1842-1912):1883年、レイノルズは流体の流れ状態(層流と乱流)を示すレイノルズ数の概念を提唱し、流量計の設計に大きく貢献しました。
  • クレマンズ・ヘルシェル(アメリカ、1842-1930):1887年にヘルシェルは、ベンチュリ管を改良し、水道事業用の実用的なベンチュリメーターを開発しました。彼はベンチュリ管の形状を最適化し、圧力損失を最小限に抑えつつ測定精度を向上させるために数百回の実験を行いました。特に、入口と喉部の間の最適な寸法比を見出すために苦心したことが記録に残っています。

3. 近代的流量計の発展(20世紀前半)

3.1 オリフィス流量計の標準化

  • 20世紀初頭、石油産業の発展により、正確な流量測定の需要が高まりました。
  • アメリカ機械学会(ASME):1910年代にオリフィス流量計の標準化に取り組み始め、1930年に最初の標準を発表しました。これにより、オリフィス流量計は工業用流量測定の主流となりました。
  • オリフィス流量計の開発者たちは、エッジの鋭さが測定精度に大きく影響することを発見し、製造技術の限界と闘いながら、エッジの劣化を最小限に抑える材料と製造方法を見出すために多くの試行錯誤を重ねました。

3.2 容積式流量計の実用化

  • 容積式流量計は、特定の容積の流体を繰り返し計測することで流量を測定します。
  • ドイツ・アメリカ:19世紀末から20世紀初頭にかけて、ドイツとアメリカの技術者たちが、水道メーターや石油測定用の容積式流量計を実用化しました。例えば、1868年に特許を取得したドイツのカール・ルートヴィヒ・シーメンスの設計が基礎となっています。
  • トーマス・グリーブス(アメリカ):1905年に現代的な容積式流量計の基礎となる楕円歯車式流量計を発明しました。彼は歯車の精密な噛み合わせを実現するために、当時の最先端の機械加工技術を駆使し、何度も設計を修正しました。特に、流体の漏れを防ぐための歯車間のクリアランスの最適化に多くの時間を費やしています。
  • 容積式流量計の開発者たちは、特に部品の摩耗と流体の漏れという二つの大きな課題に直面していました。高精度な測定を実現するため、様々な材料と設計の組み合わせを試し、耐久性と精度を両立させるソリューションを見出すまでに何年もの研究を要しました。

3.3 電磁流量計の発明

  • 電磁流量計は、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいて動作します。
  • スイス・オーストリア:1930年代に、スイスの技術者ヴァルター・ゲルラッハとオーストリアの科学者エーリッヒ・シュネーダーが、個別に電磁流量計の原理を開発しました。しかし、当時の電子技術の限界により、実用化には至りませんでした。
  • 日本:横河電機(当時の名称は横河電機製作所)も1930年代に独自に電磁流量計の研究を始め、戦後の1952年に国産初の電磁流量計の実用化に成功しました。これは、電子増幅技術の進歩により可能になったものです。
  • 電磁流量計の開発者たちは、微弱な信号の検出と増幅、外部電磁ノイズの除去、電極の材料選択など多くの技術的課題に直面していました。特に、導電性流体と接触する電極の腐食問題は深刻で、様々な金属とコーティング技術を試験するなど、実用的な解決策を見出すまでに多大な努力が払われました。

3.4 産業用流量計の多様化

  • 1920年代から1940年代にかけて、産業の多様化に伴い、様々な流量計が開発されました。
  • ドイツ:1920年代にドイツのシーメンス社が回転式流量計(タービン式)を実用化。高精度な流量測定を可能にしました。
  • アメリカ:1930年代にフィッシャー&ポーター社が面積式流量計(ロータメーター)を改良し、産業用に広く普及させました。
  • フランス:1942年にフランスのクルーゾー・スネイデル社のアンドレ・コリオリスが、コリオリの原理を応用した質量流量計の基本原理を開発しました。しかし、当時の技術では実用化が困難で、商業的成功は1970年代を待つことになりました。

4. 現代流量計の発展(20世紀後半〜21世紀)

4.1 エレクトロニクスの革新

  • 第二次世界大戦後、エレクトロニクス技術の急速な発展により、流量計の性能と機能が大幅に向上しました。
  • 1950年代:トランジスタの発明により、電子回路が小型化・低消費電力化。電磁流量計の実用化が進みました。
  • 横河電機(日本):1952年に実用的な電磁流量計を商品化。
  • ロックヒード・マーチン(アメリカ):1956年に超音波流量計の商業的開発を開始。
  • 1960年代〜1970年代:集積回路(IC)の発展により、信号処理能力が向上。
  • エマーソン・エレクトリック(アメリカ):1969年に差圧式流量計の精度を高める電子式トランスミッタを発表。
  • 横河電機(日本):1970年代に電磁流量計のデジタル信号処理技術を開発し、ノイズ耐性と測定精度を大幅に向上させました。

4.2 新原理流量計の実用化

  • 1970年代から1990年代にかけて、新しい測定原理に基づく流量計が次々と実用化されました。
渦流量計:
  • イーストマン・コダック(アメリカ):1970年代初頭に最初の商業的な渦流量計を開発。
  • 横河電機(日本):1979年に高精度な渦流量計を商品化。渦発生体の形状最適化により、広い流量範囲で安定した測定を実現。
  • エンドレス+ハウザー(スイス):1983年に産業用渦流量計を発表。耐腐食性に優れた設計で化学プロセス産業に普及。
  • フォックスボロ(アメリカ):1985年にデジタル信号処理技術を組み込んだ高性能渦流量計を開発。
コリオリ流量計:
  • マイクロモーション社(アメリカ):1977年に世界初の商業用コリオリ質量流量計を市場導入。開発者のジェームズ・スミスは、振動チューブ内の流体に作用するコリオリ力によるチューブの変形を検出する方法を考案。
  • エンドレス+ハウザー(スイス):1980年代にコリオリ流量計の小型化と高精度化に成功。1986年には直管型コリオリ流量計を開発し、配管への影響を最小化。
  • 横河電機(日本):1990年代初頭(1991年)に高感度センサー技術を応用した産業用コリオリ流量計を実用化。二重チューブ設計によって外部振動の影響を低減。
  • ABB(スイス):1990年代半ばに多相流用コリオリ流量計を開発。油田産業向けに革新をもたらす。
  • 開発者たちは、微小な振動変化を正確に検出する技術的課題に直面。特に、外部振動の影響を除去するために、センサーの配置と信号処理アルゴリズムの開発、製造工程でのチューブの均一性確保に多大な労力が投じられました。
超音波流量計:
  • 東京計器(日本):1970年代後半にトランジットタイム方式の超音波流量計を産業用途に実用化。
  • パナメトリクス(アメリカ):1970年代に伝播時間差式超音波流量計を実用化。1985年には高精度クランプオン式超音波流量計を開発し、非侵襲測定を可能に。
  • シーメンス(ドイツ):1988年にマルチパス超音波流量計を実用化。1990年代にはクランプオン式超音波流量計の精度を向上させ、既存配管への取り付けが容易な測定システムを実現。測定精度の向上に貢献。
  • 富士電機(日本):1980年代に多経路超音波流量計を開発し、水道用流量計として採用。1992年には広帯域超音波パルス変調技術を用いた流量計を開発。
  • 開発者たちは、超音波ビームの伝搬経路の安定化が最大の課題でした。特に配管内の流速分布の不均一性に対処するために、複数のビーム経路を使用した設計や、流速分布を数学的にモデル化する手法の開発に注力。クランプオン式では、配管壁での超音波の減衰と偏向の問題を解決するために、様々な接触媒質と変換器設計が試みられました。
電磁流量計:
  • フィッシャー・アンド・ポーター(アメリカ):1975年にマイクロプロセッサ制御の電磁流量計を開発。
  • クローネ(ドイツ):1982年に高耐久性セラミックライニングを採用した電磁流量計を実用化。
  • 横河電機(日本):1987年に二周波励磁方式の電磁流量計を開発。ノイズ耐性が大幅に向上。
  • ABB(スイス):1990年代初頭にバッテリー駆動の電磁流量計を実用化。遠隔地での測定を容易に。
熱式質量流量計:
  • ブルックス・インスツルメント(アメリカ):1975年に産業用サーマルマスフローメーターを開発。1980年代には熱式質量流量計の商業的普及を促進し、半導体製造プロセスで使用されるガス流量の正確な制御に貢献。
  • ブロンクホルスト(オランダ):1981年に高精度熱式質量流量計を発表。半導体製造プロセスで採用。
  • アズビル(日本、旧山武):1980年代後半(1988年)に微少流量測定用熱式質量流量計を実用化。研究開発分野で普及。
  • シーラ(ドイツ):1995年に防爆型熱式質量流量計を開発。危険区域での使用を可能に。
  • 開発では、温度センサーの安定性と応答速度の向上が大きな課題でした。特に、半導体プロセスガスなどの腐食性流体に耐える耐久性の高いセンサー材料の探索に多くの苦労がありました。
渦巻式流量計:
  • ニッコー・インスツルメンツ(日本):1981年に小型渦巻式流量計を開発。プロセス制御用として普及。
  • メイソン・ネイラン(アメリカ):1986年にデジタル出力渦巻式流量計を実用化。
  • バーゴン(イギリス):1989年に高圧用渦巻式流量計を開発。石油・天然ガス産業で採用。
光学式流量計:
  • TSI社(アメリカ):1973年にレーザードップラー流速計を商品化。研究用途に普及。
  • ダンテック・ダイナミクス(デンマーク):1982年に粒子画像速度測定法(PIV)システムを開発。
  • オリンパス(日本):1990年に小型光学式流量センサーを実用化。医療機器への応用が進む。
  • この時期の革新の特徴は、マイクロプロセッサ技術の導入によるデジタル信号処理の高度化と、材料工学の発展による耐久性・信頼性の向上にありました。特に1980年代後半からは、フィールドバス通信規格の採用により、流量計がプロセス管理システムと統合されるようになり、産業用IoTの先駆けとなりました。
  • また、この時期に新原理流量計の国際規格策定も進み、ISO 5167(差圧流量計)、ISO 6817(電磁流量計)、ISO 9104(渦流量計)などが整備され、グローバルな普及基盤が形成されました。

4.3 デジタル革命とネットワーク化

  • 1990年代から2000年代にかけて、デジタル技術とネットワーク技術の発展により、流量計の機能が大幅に拡張されました。
デジタル信号処理(DSP)技術
  • エンドレスハウザー社(スイス):1995年にDSP技術を採用した電磁流量計を発表。信号ノイズ比の改善により、従来よりも低い流速での測定が可能になりました。
  • 横河電機(日本):1998年にDSPを使用したノイズ除去アルゴリズムを搭載した電磁流量計を開発。過酷な工業環境下でも安定した測定を実現しました。
フィールドバス技術
  • フィッシャーローズマウント(アメリカ):1996年にHART通信プロトコルを採用した流量計を発表。リモート診断と設定変更を可能にしました。
  • **横河電機(日本)**とFOUNDATION Fieldbus(FF)コンソーシアム:1990年代後半にFOUNDATION Fieldbusプロトコルを開発。流量計を含む計測機器のネットワーク化を推進しました。
  • デジタル技術の導入により、流量計は単なる測定装置から「インテリジェントデバイス」へと進化。自己診断機能、複数パラメータの同時測定、流量補正機能などが実現されました。
4.4 21世紀の流量計技術
  • 2000年代以降、IoT(モノのインターネット)と人工知能(AI)技術の発展により、流量計はさらに進化を続けています。
ワイヤレス技術
  • エマーソン(アメリカ):2008年にWirelessHART対応の流量計を発表。配線工事が不要となり、設置コストを削減。
  • ABB(スイス):2010年代にBluetooth技術を採用した流量計設定ツールを開発。スマートデバイスによる簡単設定を実現。
AIとビッグデータ
  • シーメンス(ドイツ):2015年頃からAIを活用した流量計の予防保全システムを開発。流量パターンの分析により、異常の早期検出を可能に。
  • 横河電機(日本):2018年にIIoTプラットフォームと連携した流量計データ解析システムを発表。プロセス最適化と省エネルギーに貢献。
マルチパラメータ測定
  • ABB(スイス):2010年代に流量、密度、温度などを同時測定できるマルチパラメータ流量計を開発。
  • エンドレスハウザー(スイス):2020年に流量、濃度、粘度を同時に測定できる新世代のコリオリ流量計を発表。

5. 流量計の種類と特徴の詳細解説

5.1 差圧式流量計

オリフィス流量計
  • 測定原理:配管内に設置された円板状のオリフィス板によって流れを絞り、前後の圧力差から流量を算出します。
  • 特徴:構造が単純で堅牢、初期費用が安価。広範囲の流体に適用可能。
  • 課題:流量範囲が限られる(約3:1)、圧力損失が大きい、オリフィスエッジの摩耗により精度が劣化。
  • 主な用途:天然ガス、蒸気、空気などの流量測定。化学プロセスの一般的な流量測定。
  • 精度:±1〜2%(フルスケール)。
ベンチュリ管
  • 測定原理:徐々に管径を絞り、その後徐々に広げる形状により、絞り部での圧力降下から流量を算出。
  • 特徴:オリフィスよりも圧力損失が小さい、直管長が短くても高精度、詰まりにくい。
  • 課題:サイズが大きく、設置スペースが必要、初期費用が高い。
  • 主な用途:大口径配管での流量測定、固形物を含む流体の測定、水道管理システム。
  • 精度:±0.5〜1.5%(レンジ)。
ピトー管
  • 測定原理:流れの方向に向けた開口部(全圧)と、流れに垂直な開口部(静圧)の圧力差を測定。
  • 特徴:設置が簡単、圧力損失がほとんどない、大口径配管に適する。
  • 課題:低流速での精度が低い、詰まりやすい、流速分布の影響を受けやすい。
  • 主な用途:大口径配管や開水路での流速測定、航空機の速度計測。
  • 精度:±2〜5%(フルスケール)。

5.2 容積式流量計

歯車式流量計
  • 測定原理:流体の流れによって一対の歯車を回転させ、その回転数から流量を算出。
  • 特徴:高粘度流体に適する、高精度、流量範囲が広い(10:1程度)。
  • 課題:摩耗による精度劣化、固形物を含む流体には不向き、圧力損失が比較的大きい。
  • 主な用途:油、燃料、化学薬品などの高粘度液体の測定。
  • 精度:±0.1〜0.5%(レンジ)。
楕円歯車式流量計
  • 測定原理:一対の楕円形の歯車が流体により回転し、その回転数から流量を測定。
  • 特徴:歯車式よりもさらに高粘度流体に適する、脈動が少ない、自吸性がある。
  • 課題:高価、複雑な構造、固形物による損傷リスク。
  • 主な用途:食品産業(チョコレート、蜂蜜など)、高粘度薬液の定量供給。
  • 精度:±0.1〜0 .3%(レンジ)。
回転ピストン式流量計
  • 測定原理:偏心した回転ピストンが流体により回転し、その回転数から流量を測定。
  • 特徴:信頼性が高い、流量範囲が広い(約15:1)、自吸性がある。
  • 課題:圧力損失が大きい、摩耗の影響、固形物を含む流体には不向き。
  • 主な用途:水道メーター、燃料油の取引用計量。
  • 精度:±0.2〜0.5%(レンジ)。

5.3 電磁式流量計

交流励磁式電磁流量計
  • 測定原理:導電性流体が磁場を横切る際に発生する起電力を測定し、流量を算出。
  • 特徴:圧力損失がない、可動部がない、広い測定範囲(約100:1)、衛生的。
  • 課題:導電性流体のみ測定可能、配管を非磁性体にする必要がある。
  • 主な用途:上下水道、食品・飲料産業、紙・パルプ産業、スラリー測定。
  • 精度:±0.2〜0.5%(レンジ)。
直流励磁式電磁流量計
  • 測定原理:交流励磁式と同じ原理だが、磁場発生に直流を使用。
  • 特徴:ノイズに強い、電力消費が少ない、バッテリー駆動が可能。
  • 課題:電極の分極現象対策が必要、導電性流体のみ測定可能。
  • 主な用途:農業用水測定、遠隔地での水量測定、バッテリー駆動型システム。
  • 精度:±0.3〜0.5%(レンジ)。
二周波励磁式電磁流量計
  • 測定原理:二つの異なる周波数の交流磁場を使用し、ノイズや流体ノイズを低減。
  • 特徴:スラリーやノイズの多い環境でも高精度、ゼロ点安定性が高い。
  • 課題:高価、構造が複雑、設定が複雑。
  • 主な用途:製紙工程のパルプスラリー測定、鉱山のスラリー測定、製鉄所の冷却水測定。
  • 精度:±0.15〜0.3%(レンジ)。

5.4 超音波式流量計

伝播時間差式超音波流量計
  • 測定原理:上流と下流方向の超音波伝播時間差から流速を算出。
  • 特徴:圧力損失がない、外部取付型あり、高精度、広い測定範囲(約100:1)。
  • 課題:気泡や固形物の影響を受けやすい、流速分布の影響を受ける。
  • 主な用途:上下水道、都市ガス、液化天然ガス(LNG)、熱量計。
  • 精度:±0.5〜1%(レンジ)(多経路では±0.1〜0.3%)。
ドップラー式超音波流量計
  • 測定原理:流体中の粒子や気泡からの反射超音波の周波数変化(ドップラー効果)から流速を算出。
  • 特徴:固形物や気泡を含む流体の測定に適する、外部取付型が多い、設置が容易。
  • 課題:清澄液には適用できない、粒子濃度や分布により精度が変動、流速分布の影響を受ける。
  • 主な用途:下水、スラリー、汚泥など固形物を含む流体の測定。
  • 精度:±2〜5%(レンジ)。
相関式超音波流量計
  • 測定原理:二点間の流体中の乱れパターンの相関から流速を算出。
  • 特徴:ドップラー式より精度が高い、気泡や固形物を含む流体に適する。
  • 課題:高価、演算処理が複雑、乱れが少ない流れでは精度が低下。
  • 主な用途:製紙工程、ポリマー溶液、高濃度スラリー。
  • 精度:±1〜3%(レンジ)。
多経路超音波流量計
  • 測定原理:複数の超音波ビームを使用して流速分布を測定し、より正確な流量を算出。
  • 特徴:非常に高精度、流速分布の影響を補正、広い口径範囲に適用可能。
  • 課題:高価、設置・調整が複雑、多数の変換器が必要。
  • 主な用途:取引用計量、水力発電所の流量測定、LNG受け渡し計量。
  • 精度:±0.1〜0.3%(レンジ)。

5.5 渦流量計

カルマン渦式流量計
  • 測定原理:流体中に置かれた障害物(渦発生体)の後方に生じるカルマン渦の周波数から流量を算出。
  • 特徴:構造がシンプル、可動部がない、圧力・温度の影響が小さい、測定範囲が広い(約20:1)。
  • 課題:低流量での精度が低下、振動の影響を受けやすい、直管長が必要。
  • 主な用途:蒸気、圧縮空気、工業用水、液化ガスの測定。
  • 精度:±0.5〜1%(レンジ)。
渦予旋式流量計
  • 測定原理:旋回流を発生させ、その周波数から流量を算出。
  • 特徴:低流量でも測定可能、直管長が短くて済む、ノイズに強い。
  • 課題:形状が複雑、レイノルズ数の影響を受けやすい。
  • 主な用途:ガス、液体の小流量測定、半導体製造プロセスのガス測定。
  • 精度:±1〜2%(レンジ)。
渦振動式流量計
  • 測定原理:流体中の振動体の振動周波数から流量を算出。
  • 特徴:小口径に適する、低流量測定が可能、構造がシンプル。
  • 課題:粘度の影響を受けやすい、レイノルズ数依存性がある。
  • 主な用途:小口径配管でのガス、液体の流量測定。
  • 精度:±1〜1.5%(レンジ)。
5.6 熱式流量計
  • 測定原理:加熱した検出部の温度分布から質量流量を直接測定。
  • 特徴:圧力・温度補正が不要、広い測定範囲(約100:1)、質量流量の直接測定。
  • 課題:流体の熱物性に依存、応答速度が遅い、汚れの影響を受けやすい。
  • 主な用途:半導体製造プロセスのガス測定、バイオガス測定、小流量ガス測定。
  • 精度:±1〜1.5%(レンジ)。
熱線式風速計
  • 測定原理:熱線の冷却効果から流速を測定。
  • 特徴:応答速度が速い、微小流速も測定可能、方向検出も可能。
  • 課題:繊細で壊れやすい、汚れの影響を強く受ける、温度の影響を受ける。
  • 主な用途:空調システムの風速測定、風洞実験、乱流研究。
  • 精度:±2〜5%(レンジ)。
カロリメトリック式熱流量計
  • 測定原理:流体に加えた熱エネルギーと温度上昇から流量を算出。
  • 特徴:超低流量測定が可能、微小配管に適する、高精度。
  • 課題:流体の比熱が既知である必要がある、大流量には不向き、応答速度が遅い。
  • 主な用途:医療機器、分析機器、微小流量制御。
  • 精度:±0.5〜2%(レンジ)。

5.7 コリオリ式流量計

U字管式コリオリ流量計
  • 測定原理:振動するU字管内の流体に働くコリオリ力による管のねじれから質量流量を直接測定。
  • 特徴:質量流量の直接測定、非常に高精度、密度も同時測定可能、流体の性質に依存しない。
  • 課題:高価、振動の影響を受けやすい、設置スペースが必要。
  • 主な用途:石油・化学製品の取引用計量、食品・飲料の計量充填、高精度プロセス制御。
  • 精度:±0.1〜0.2%(レンジ)。
ストレートチューブ式コリオリ流量計
  • 測定原理:振動する直管内の流体に働くコリオリ力による管の変形から質量流量を測定。
  • 特徴:U字管式より圧力損失が小さい、詰まりにくい、洗浄性が良好。
  • 課題:U字管式より感度が低い、振動の影響を受けやすい、高価。
  • 主な用途:衛生的な用途(食品・製薬)、高粘度流体、多相流。
  • 精度:±0.1〜0.25%(レンジ)。
ツインチューブ式コリオリ流量計
  • 測定原理:並列に配置された2本の振動管の位相差から質量流量を測定。
  • 特徴:外部振動の影響を相殺、高精度、安定性が高い。
  • 課題:複雑な構造、高価、大型。
  • 主な用途:高精度の取引用計量、バッチ制御、混合比制御。
  • 精度:±0.05〜0.1%(レンジ)。

5.8 その他の重要な流量計

面積式流量計(ロータメーター)
  • 測定原理:テーパー管内のフロートが流体力と重力のバランスで位置を変え、その位置から流量を読み取る。
  • 特徴:シンプルな構造、電源不要、目視確認可能、圧力損失が小さい。
  • 課題:精度が低い、必ず垂直に設置、透明管では高温・高圧に弱い。
  • 主な用途:ローカル流量指示、ガス・液体の低コスト測定、ラボ用機器。
  • 精度:±2〜5%(フルスケール)。
ターゲット式流量計
  • 測定原理:流体の流れに置かれたターゲット(円盤など)に働く力から流量を測定。
  • 特徴:構造がシンプル、高温・高圧に対応可能、ダーティーフルイドにも適用可能。
  • 課題:精度が低い、圧力損失が大きい、磨耗の影響を受ける。
  • 主な用途:高温流体、スラリー、コスト重視アプリケーション。
  • 精度:±2〜5%(フルスケール)。
タービン式流量計
  • 測定原理:流体の流れによってタービンローターを回転させ、その回転数から流量を算出。
  • 特徴:高精度、応答速度が速い、パルス出力が得られる。
  • 課題:可動部の磨耗、粘度の影響を受けやすい、固形物に弱い。
  • 主な用途:低粘度の清浄流体測定、航空機燃料システム、水道メーター。
  • 精度:±0.25〜0.5%(レンジ)。

6. 流量計の普及状況と市場動向の詳細分析

6.1 全世界での普及状況と市場規模

全世界の流量計市場規模
  • 2023年:約98億米ドル
  • 2030年予測:約140億米ドル(年平均成長率:約5.2%)
地域別市場シェア(2023年):
  • 北米:28%
  • 欧州:26%
  • アジア太平洋:35%
  • その他:11%
全世界で最も普及している流量計(2023年出荷台数ベース):
流量計の世界シェア:
電磁流量計:約26%
水処理、食品・飲料、化学、紙・パルプ産業での広範な採用
特に上下水道インフラでの採用率が高い
差圧式流量計:約22%
特にオリフィス式が石油・ガス、化学プロセス産業で広く使用
設置済みベースでは最大のシェア
コリオリ質量流量計:約16%
高付加価値アプリケーション、特に石油・ガス、化学、食品産業で成長
金額ベースでは最大のシェア(約24%)
超音波流量計:約15%
ガス、水、熱エネルギー計測で急速に普及
特に非侵襲式(クランプオン式)の採用が拡大
渦流量計:約10%
蒸気、圧縮空気、水などの産業用途で普及
その他(容積式、熱式、面積式など):約11%

流量計の日本国内シェア
電磁流量計:約32%
上下水道、食品、化学プロセスでの広範な採用
1950年代から国内メーカーによる生産・普及が進んだ
差圧式流量計:約18%
プロセス産業での長年の実績
デジタル差圧伝送器の高い普及率
超音波流量計:約16%
都市ガス、水道、熱量計での採用拡大
特に多経路超音波流量計の技術開発が進展
渦流量計:約12%
日本メーカーの技術力の高さから普及
特に蒸気計測での採用率が高い
コリオリ質量流量計:約11%
高付加価値用途での採用が増加
輸入品が多いが、国産化も進展
その他(容積式、熱式、面積式など):約11%
産業別の主流流量計(2023年):
  • 石油・ガス産業:コリオリ質量流量計、差圧式流量計、超音波流量計
  • 水処理産業:電磁流量計、超音波流量計
  • 化学産業:電磁流量計、コリオリ質量流量計、差圧式流量計
  • 食品・飲料産業:コリオリ質量流量計、電磁流量計
  • 製薬産業:コリオリ質量流量計、超音波流量計(非侵襲式)
  • 半導体産業:熱式質量流量計、超微少流量用コリオリ流量計

6.2 日本国内の普及状況と市場特性

日本の流量計市場規模
  • 2023年:約1,850億円
  • 2030年予測:約2,350億円(年平均成長率:約3.5%)
日本の流量計市場の特徴
  • 高品質・高精度志向が強く、世界最高水準の流量計が国内生産されている
  • デジタル化・ネットワーク化への対応が早く、フィールドバス対応製品の普及率が高い
  • 省エネルギー法の影響で、蒸気や圧縮空気などのユーティリティ計測用流量計の需要が堅調
  • 少子高齢化による技術者不足を背景に、メンテナンス性の高い製品が求められている
  • 地震国であることから、耐震性能が重視される
  • 品質管理基準が厳しく、トレーサビリティの確保された流量校正サービスが発達

6.3 流量計の世界的タイムライン

古代〜中世
  • 紀元前3000年頃:メソポタミアで初期の水流測定システム
  • 紀元前1世紀:ローマで「カリブレーティッド・コックス」による水量測定
  • 13世紀:ヨーロッパで水車効率向上のための水流測定
近世〜近代初期(流体力学の理論確立期):
  • 1643年:トリチェリによる流出速度の定理
  • 1732年:ピトー管の発明(アンリ・ピトー、フランス)
  • 1738年:ベルヌーイの原理発表(ダニエル・ベルヌーイ、スイス)
  • 1797年:ベンチュリ管の発明(ジョヴァンニ・ベンチュリ、イタリア)
産業革命期(実用的流量計の登場):
  • 1830年代:最初の商業的な水道メーターの登場(イギリス)
  • 1852年:V字堰の開発(ジェームズ・トムソン、イギリス)
  • 1858年:ヘルシェル水量計の実用化(クレメント・ヘルシェル、イギリス)
  • 1886年:オリフィス流量計の基本原理の確立(アメリカ)
  • 1887年:実用的なベンチュリメーターの開発(クレマンズ・ヘルシェル、アメリカ)
20世紀前半(流量計の多様化と規格化):
  • 1905年:楕円歯車式流量計の発明(トーマス・グリーブス、アメリカ)
  • 1920年代:タービン式流量計の実用化(シーメンス、ドイツ)
  • 1930年:ASME(米国機械学会)によるオリフィス流量計の規格化
  • 1930年代:電磁流量計の原理発明(スイス、オーストリア)
  • 1942年:コリオリ原理を応用した質量流量計の基本原理開発(フランス)
20世紀後半(エレクトロニクス革命と新原理流量計):
  • 1952年:実用的な電磁流量計の商品化(横河電機、日本)
  • 1956年:超音波流量計の商業的開発開始(ロックヒード・マーチン、アメリカ)
  • 1960年代:半導体技術の進歩による流量計の高性能化
  • 1970年代初頭:最初の商業的な渦流量計の開発(イーストマン・コダック、アメリカ)
  • 1977年:実用的なコリオリ質量流量計の商品化(マイクロモーション、アメリカ)
  • 1980年代:熱式質量流量計の産業利用拡大(ブルックス・インスツルメント、アメリカ)
  • 1990年代:多経路超音波流量計の精度向上と普及(日本、ヨーロッパ)
  • 1996年〜:フィールドバス技術の導入(HART、FOUNDATION Fieldbus)
21世紀(デジタル技術と統合システム):
  • 2000年代初頭:マルチバリアブル流量計(複数パラメータ同時測定)の普及
  • 2008年:無線技術対応流量計の登場(WirelessHARTなど)
  • 2010年代:IIoT(産業用モノのインターネット)対応流量計の普及
  • 2015年頃〜:AI技術を活用した流量計診断・予測保全システムの登場
  • 2020年代:クラウド連携とビッグデータ分析を活用した次世代流量計測システムの展開

6.4 主流流量計の世界と日本のタイムライン比較

世界市場での主流流量計の変遷
  • 1950年代:差圧式流量計(オリフィス、ベンチュリ)が市場の70%以上を占める
  • 1960年代:電磁流量計の本格的な普及開始、差圧式は60%程度に
  • 1970年代:容積式流量計、タービン流量計の普及拡大
  • 1980年代:超音波流量計の商業的成功、コリオリ流量計の市場参入
  • 1990年代:電磁流量計が差圧式を抜いて最大シェアに、コリオリ流量計の急成長
  • 2000年代:電磁流量計と超音波流量計で市場の約40%を占める
  • 2010年代:コリオリ流量計が金額ベースで最大シェア、超音波流量計の利用拡大
  • 2020年代:非接触式(クランプオン超音波など)と多機能型流量計の需要増加
日本市場での主流流量計の変遷
  • 1950年代:差圧式流量計が市場の80%以上を占める
  • 1960年代:国産電磁流量計の本格的な普及開始
  • 1970年代:日本独自の高精度渦流量計の開発と普及
  • 1980年代:電磁流量計が市場の30%を超え、最大シェアに
  • 1990年代:超音波流量計の精度向上と普及、特に水道・ガス分野で
  • 2000年代:電磁流量計と超音波流量計で市場の約50%を占める
  • 2010年代:省エネ法対応で蒸気用流量計(渦流量計など)の需要増加
  • 2020年代:IoT対応流量計とワイヤレス技術の普及拡大

7. 流量計の技術的課題と将来展望

7.1 現代の流量計が直面する技術的課題

測定精度の向上
  • 微小流量の高精度測定(医療・半導体分野での需要)
  • 広いレンジアビリティ(最大流量と最小流量の比)の実現
  • 過酷環境下(高温・高圧・腐食性流体)での精度維持
  • 多相流(気液二相流、スラリーなど)の正確な測定
設置・保守の簡素化
  • 非侵襲式(配管を切断せずに設置可能)流量計の測定精度向上
  • 自己診断機能と予知保全機能の強化
  • キャリブレーションフリー技術の開発
  • リモートモニタリング・設定変更機能の拡充
省エネルギー・小型化
  • 低消費電力化(バッテリー駆動・エネルギーハーベスト技術の活用)
  • センサー・変換器の小型化
  • 流体抵抗(圧力損失)の低減
  • 限られたスペースへの設置対応(直管長が短くても高精度を維持)
通信・制御系統との統合
  • 様々な通信プロトコルへの対応
  • サイバーセキュリティの確保
  • レガシーシステムとの互換性維持
  • クラウドシステムとの効率的な連携

7.2 新興技術と研究開発動向

非接触式流量測定技術
  • レーザードップラー流速計の産業応用の拡大
  • 核磁気共鳴(NMR)を利用した非侵襲的流量測定
  • マイクロ波やミリ波を用いた配管外からの流量測定
  • 画像処理技術を活用した流れの可視化と流量算出
MEMS(微小電気機械システム)技術
  • シリコンチップ上の微小流路を利用した高精度小型流量計
  • 医療用・ウェアラブルデバイス向け極小流量センサー
  • 分散配置可能な低コスト・低消費電力センサーネットワーク
  • 3Dプリンティング技術を活用した複雑形状センサーの製作
AIとデータ分析
  • 機械学習を用いた流量パターン認識と異常検知
  • デジタルツイン技術による流量計の仮想校正
  • リアルタイムビッグデータ解析による流体制御の最適化
  • エッジコンピューティングによる遅延のない流量測定データ処理
複合センサー技術
  • 流量・圧力・温度・密度・粘度など複数パラメータの同時測定
  • 異なる測定原理のセンサーを組み合わせた冗長性確保
  • 複数のセンサーデータを融合した高精度測定
  • 材質や成分も同時に測定できる多機能センシング

7.3 サステナビリティと環境配慮

  • 長寿命設計と廃棄物削減
  • リサイクル可能な材料の使用拡大
  • 有害物質を使用しない製造プロセス
  • ライフサイクルアセスメントに基づく設計最適化
エネルギー効率向上への貢献
  • エネルギー使用量モニタリングによる消費効率化
  • 漏洩検知機能による資源損失の防止
  • 流体システムの最適制御による省エネルギー
  • カーボンニュートラル実現に向けた計測ソリューション
水資源管理への貢献
  • 漏水検知・監視システムの高度化
  • 分散型水質モニタリングとの統合
  • スマートウォーターグリッドの実現
  • 水ストレス地域向けの低コスト・高信頼性ソリューション

7.4 将来展望

2025年〜2030年
  • 非接触式流量計の精度向上と普及拡大
  • AIを活用した自己学習型流量測定システムの実用化
  • 複数のセンシング技術を統合したマルチモーダル流量計の普及
  • エネルギーハーベスト技術を活用した配線レス流量計の実用化
2030年〜2040年
  • 量子センシング技術を応用した超高精度流量計の実現
  • 生体模倣(バイオミメティクス)技術を活用した革新的流量センサー
  • 完全自律型メンテナンスフリー流量計の実用化
  • ナノスケールでの流体挙動計測技術の産業応用
2040年以降
  • スマートマテリアルを活用した流体と一体化するセンシング技術
  • 環境から必要なエネルギーを完全自給する永久動作型センサー
  • 分子レベルの流体挙動を把握する革新的計測技術
  • 人間の介入なしに自律的に進化する流量測定システム

8. 結論:流量計の過去、現在、そして未来

  • 流量計の歴史は、人類が水の流れを測りたいと考えた古代にまで遡ります。古代ローマ人の原始的な水量測定から始まり、流体力学の理論的発展を経て、産業革命期には実用的な流量計が登場しました。20世紀になると、電子技術の進化とともに電磁流量計や超音波流量計などの新しい測定原理が次々と実用化され、現代では高精度・多機能な流量計が様々な産業分野で重要な役割を果たしています。
  • 現在、世界市場では電磁流量計が出荷台数で最も普及しており、金額ベースではコリオリ質量流量計が最大シェアを占めています。これは、コリオリ流量計の高精度と信頼性の高さが、製薬や食品産業などの高付加価値産業で評価されているためです。
  • 今後の流量計技術の発展においては、以下のトレンドが重要になると予測されています:
  • IoTとの融合: スマート流量計の普及により、リアルタイムデータ収集と分析が可能になり、予測メンテナンスや最適化が進展します。
  • AIと機械学習の活用: 測定データの高度な解析により、流体挙動の異常検知や自己校正機能を持つ次世代流量計が登場するでしょう。
  • 省エネルギー・小型化: エネルギー消費の少ない流量計や、マイクロ流体用の超小型センサーなど、環境負荷の低減と適用範囲の拡大が進みます。
  • 非接触測定技術の進化: 超音波やレーザーを用いた非侵襲的な流量測定技術がさらに発展し、特に医療分野での応用が広がるでしょう。
  • 多変数測定の統合: 流量だけでなく、温度、圧力、密度、粘度などを同時に測定できる多機能センサーの需要が高まっています。
  • 流量計の歴史は人類の科学技術の発展と密接に関連してきました。今後も産業のニーズと技術革新が相互に影響し合いながら、より正確で信頼性の高い流量測定技術が開発されていくことでしょう。特に持続可能な社会の実現に向けて、エネルギーや水資源の効率的利用を支える計測技術として、流量計の重要性はさらに高まっていくと考えられます。

9. 参考文献と追加リソース

  • Baker, R.C. (2016). “Flow Measurement Handbook: Industrial Designs, Operating Principles, Performance, and Applications”
  • Spitzer, D.W. (2011). “Industrial Flow Measurement”
  • 日本計測自動制御学会 (2018). 「流量計測ハンドブック」
  • Flow Research, Inc. (2024). “The World Market for Flowmeters, 8th Edition”
  • International Society of Automation (ISA) Standards
  • 各流量計メーカーの技術資料とホワイトペーパー
主要国際規格
  • ISO 5167: 差圧式流量計の規格
  • ISO 4064/OIML R49: 水道メーターの規格
  • ISO 17089: 超音波流量計の規格
  • API MPMS Chapter 5: 石油産業における流量測定規格
  • ASME MFC: 流量測定と制御に関する規格群
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